手術を考えている人の大半は痛みで苦しんでいるからであり、手術さえすれば誰でも完全に治ってしまうと思い込んでいるからです。ここでもう一度注意しなければならないのが、手術をして完全に良くなったという人は意外と少ないということです。
前にも説明しましたが、「痛い時は曲がる時」であり、炎症を起こしている時期なので、この炎症を足裏バランスケアテープで止めることが先なのです。もし手術をするにしても、痛みや炎症が止まってからの方が効果が良いのです。手術をした人の中には、変形がわずかなのにもかかわらず、痛みのために手術をしてしまい、かえって後遺症に苦しんでいる人も多く見かけ、明らかに手術の必要性を感じとれない術例にもしばしば出合います。
同じ外反母趾でも、種類や程度により最初からうまくいくものと失敗するものがはっきりしているので、それを見極めなければなりません。たとえ手術で形は良くなったとしても、親指が機能的に働かなければ再び曲がってしまったり、力学的アンバランスにより他の所が痛くなります。これでは手術が全てだとはとても思えません。足裏バランスケアテープを1ヶ月前後貼れば、痛みだけは完全に治りますので、まず足の痛みが取れてから手術を考えてください。たとえ指は曲がっていても、それなりの知識を持ち、予防していけば健康にすごせるので、今痛くても手術するかどうかの判断は次の事を参考にしてから決めてください。
①:痛みが取れると殆どの人が手術する気がなくなってしまう現象がある。
②:手術後3年後の経過を見た場合、機能的な成功率は低いという結果がある。
③:痛みがなくなると冷静な判断ができ、自分に合った処置ができるというメリットがある。
外反母趾の中には明らかに手術をした方が良い結果が得られる場合があります。私は、次のようなことを前提にした上で、手術を勧めることがあります。それは手術によってはっきりした予後の改善が見込まれる場合と、親指の変形が身体に著しい持続的な苦痛を及ぼしているものや、美容上マイナス面の方が大きく、どうしても耐え難いという人です。
まとめてみると次のようなことが基準になると思います。
①:はっきりとした予後の改善が見込まれる場合
例えば仮骨性外反母趾のように、骨の突出が原因であり、骨の切除により形が整い、親指としての正常な機能が残っているもの或いは残せる場合。
また、骨の切除で著しい圧迫が取り除かれる見込みがある場合。
②:日常生活に著しい持続的な苦痛を及ぼしている場合
変形が著しく靴が履けない、歩けない。また、痛くて長年苦しみ健全であるべき日常生活に著しい支障をきたている場合。
③:美容上どうしても耐え難い場合
醜く曲がった足を、人前に出さなければならないような職業、美意識が強く形 を整える事によって、精神的圧迫やコンプレックスから解放される場合。
いざ手術をするとなると、心配なのが結果だと思います。あらかじめ失敗例や予後の状態なども充分踏まえた上で、手術に挑むようにしなければなりません。それ程足は微妙で、敏感で、かなりの個人差があるのです。たかが足などとあなどってはいけません。
次に、失敗例とは実際どういうことなのか、具体的に説明しておきましょう。術後1~2年を対象にした私の調査結果の中で、失敗例や予後をまとめたものです。
〈1〉親指に全く力が入らなくなってしまった
形はどうにか戻ったが、親指がゆらゆらして全く力が入らず、飾りだけの状態になってしまい、しかも機能的作用が全くない。
〈2〉再び変形してきて、1~2年で元のように曲がってしまった
最初の3ヶ月位はなんとか正常な形を保っていたが、次第に曲がり始め、2年目ではすっかり元の外反母趾に戻ってしまった。
〈3〉他の部位に新たな痛みが出るようになった
手術をしたことによってバランスが狂い、急に足の甲や足首、膝、腰に痛みが起こり、頭痛、肩コリが激しくなった。
〈4〉親指とそのつけ根が完全に固まって働かなくなってしまった
親指とつけ根が一本の棒みたいに固まり、まるで関節がなくなってしまったかのようになって、正常な歩行ができなくなった。
〈5〉よけい変形がひどくなり、逆に反対側に曲がってしまった
手術によってよけい曲がってしまったり、逆に反対側に曲がってしまう事もあり、外反母趾の特性をよく見極めてからでないと思わぬ失敗となり、再手術を余儀なくされることもしばしば見受けられ、決してめずらしくありません。
このため、外反母趾の手術は本文を参考にし、医師と念入りに相談した上で行われなければなりません。
リウマチ性の外反母趾は、炎症を起こし始めると2~3ヶ月の短い期間で他の指と共にひどい変形と脱臼を伴い、様々な形で固まって、歩行困難になる場合があります。
このように、リウマチのある人は特にひどい曲がり方や脱臼をしてしまうので、炎症の起こり始めにテープで足裏のバランスを整えておくと、変形を最小限にくいとめることができます。
指のつけ根の関節(中足指関節)全体に腫れや痛みが出たら、3ヶ月位テープで形を整えておくことが望ましいと思います。
当院の調査結果ではこの時期にテープを貼った人と、貼らないでステロイド剤で過ごした人でははっきりとした差が出ているのです。
リウマチだからしかたがないと、あきらめて何もしないで取り返しがつかない足にするより、テープで足裏のバランスを整え、変形を最小限にくいとめる努力をした方が得策だと思います。